八十八ヶ所巡礼 / 八+八

Country: Japan
Genre: Rock
Order: 1st Full
Release: 2010
Rate: 85
1. 具現化中
2. 日本
3. 仏滅トリシュナー
4. 女々しい女
5. 浮世デェト
6. 八十八発
7. 親孝行
8. BUTT'S TRIP BAR
9. 愛ハ三文字 (ボーナストラック)
10. 女性問題ト賭ケゴルフ (〃)
11. ohenro3 (〃)
12. 9.17 (〃)
13. 脳ハ寝テナイ (〃)
14. 太陽ヲ盗ンダ男 (〃)
15. 殺風景グローバルグルーヴ (〃)
16. オノボリサン2006 (〃)
自称「親孝行バンド」。
目立ったメディア露出はないものの動画サイトや口コミなどで話題になりました。自分もYoutubeで"仏滅トリシュナー"を聞いて驚愕、脳内に警報が鳴り響いたといういわくつきのバンドで、今もその衝撃は忘れることができません。現在の邦楽において他にはない個性を確立している音楽性と「なぜこの3人が集まってしまったのか???」と不思議に思わずにはいられない整合性のないメンバー(ベース兼ボーカルとドラムは幼馴染らしい)、そして強烈なビジュアル、ワンマンライブなどを実施する日は仏滅を選んだりと本気なのかなんなのかわからないところなど一瞬でその魅力にやられてしまいました。
内容はメイン8曲+この1stフルを発売する前に発表した音源の中から厳選された8曲の計16曲。
いや、"仏狂"入れてくれよ!!と叫びたくなる気持ちはなんとかこらえまして、一般に流通している1stフル以前のデモ音源はかなりレア盤となってるので音源化してくれただけでもありがたやですね。
一言で表すことが非常に困難な音楽性のため、どうしても断片的な情報でしか言うことはできませんが、Steve Vaiに影響を受けたと思われるKatzuya Shimizuのテクニカルなギターワークをマーガレット廣井のうねうねと主張しまくるベースと一つ一つのアタックが地鳴りのような響きを感じさせる賢三の力強いドラミングとが支え、八十八ヶ所巡礼の顔とも呼ぶべきマーガレット廣井の中性的且つ蠱惑的なサイケデリックヴォイスが時には呪詛のように時には艶やかに響きわたる様は、まさにインディーロックのある種極北と言ってもいいくらい、聞きやすさととっつきづらさ、ポピュラーとカルトの狭間を行き来するが如く変幻自在なプログレッシブ/サイケデリックロックとなっています。完全に人を選ぶアンダーグラウンド音楽ではありますが、不思議と地下のにおいは薄く人なつこい雰囲気も漂っているのがミソで、バンド全体を通して"中毒性"という言葉がぴったりでございます。
彼らを知るきっかけとなった唯一無二のトリップソング 3. 仏滅トリシュナーをはじめ、マーガレット廣井の"演説"が最高にクールでトチ狂った代表曲 2. 日本、ギターとベースのブルージーな旋律からスラッシュメタルばりの攻撃性を見せる展開が本編ラストを飾るに相応しい8. BUTT'S TRIP BARなど一癖も二癖もある楽曲が並び、八十八ヶ所巡礼の音楽を手っ取り早く知りたいという方にはまさしく入門的な役割を果たすアルバムだと思います。
全体を聞けば"仏滅トリシュナー"のような曲は例外と言え、基本的には彼ら独自の解釈が多分に入ってはいますが普遍的でかっちょいいロックをやってます。劈頭を飾る1. 具現化中なんかはまさにそうで、ノリのいいカッティングギターとヘヴィネスにバンドの宗教観が支配する歌詞世界が取り巻く様相は多くの楽曲の要となっています。これがもっと宗教的だったらもっととっつきづらくなっていただろうしロックの部分はカルトさを中和する役割も担っているのかもしれません。
この1stの時点で個性は充分確立されていますが個人的にはもっと2. 日本や3. 仏滅トリシュナーのようなものが聞きたかった。というか最初の3曲がインパクト強すぎてそれ以降が霞んでしまっているのが正直なところで、バンドとしての個性から曲単体への個性へと繋げていくのが今後の課題になるのかなと思いました。まぁ作を重ねるごとにその差異も無くなっていきすごいアルバムを作ってくれたのは嬉しかったです。
後半8曲のボーナストラックの方は、本編のアクの強い楽曲と比べるとよりジャンルに率直なものが多く、世界観もどっちかと言えば希薄なので印象には残らないかもしれません。グルーヴを感じることができるので八十八ヶ所巡礼の変遷を辿るにはうってつけの貴重な音源だと言えるでしょう。なぜこのテーマ?と首を傾げざるを得ない歌詞の10. 女性問題ト賭ケゴルフや15. 殺風景グローバルグルーヴなどに際立った個性があり、他の曲もサイケな酩酊感が強いです。
巷に蔓延るロックに辟易していたり特徴的な音楽が聞きたいという人は是非一聴してみることをおすすめします。様々なジャンルからの影響が窺えるため、世間から一歩も二歩も地下に潜った彼らが影響された音楽を鑑みるのも面白いかもしれません。
仏滅トリシュナー
公式HP
http://88kasyo.com/index_pc.html