EARLY CROSS / Pathfinder

Country: Japan
Genre: Progressive Gothic Rock/Metal
Order: 1st Full
Release: 2013
Rate: 91
1. Ashes & Yarrow
2. Cry Havoc
3. Hymn to the Fallen
4. In the Half Light of the Canyon
5. Cairn
6. The Pilgrimage
7. The Fog
バンドの経緯についてはホームページに詳しく記されていますのでそちらをどうぞ。[http://earlycrossband.com/ja/about]
自らを"Landscape Rock"と称する日本発プログレッシブゴシックロックバンドの1stアルバム。女性ボーカルを含む5人編成で、日本の土壌・風土から生まれたのが奇妙に思えるほど徹底したサウンドが特徴です。
どう徹底しているのかというと、たいてい日本のゴシカルなバンドといえばシンフォニックな音が中心となって可憐さを強調していたり(Liv Moon、Cross Veinなど)和の雰囲気を押し出して日本独自のサウンドを奏でていたり(陰陽座、六合など)しますが、Early Crossはこれらのバンドとは一線を画すような、日本のバンドだと事前情報を知らなければヨーロッパのどこかの国から出てきたバンドなんだろうと思い込んでしまうような、そんないい意味で日本離れしたサウンドを出しています。
そういうことをすると、大体は奇を衒ったものになったり垢抜けなさが強調されてなんともいえない感じになったりと残念な出来になってしまいます。しかしEarly Crossは職人芸とも言うべき楽曲のアレンジやアトモスフィアの構築が隙がないほどに徹底され、OpethやKatatonia、Paradise Lostなどの陰鬱系バンドの大御所たちから影響を受けたかのようなヘヴィネスとメロディの幸福な邂逅が随所に示され、その玄妙な世界観にどっぷりと浸れること請け合いです。
ボーカルを執るウクライナとのハーフ、Natasha嬢の物憂げな美声に幽玄なメロトロンの音色が被さるオープニングナンバー、1. Ashes & Yarrowから2. Cry Havoc、3. Hymn to the Fallenと進行するにつれ、その目くるめく眩暈感に恍惚となるのは勿論、ところどころにその陶酔感からハッと目覚めさせるような重厚なギターワークが仕掛けられているのが心憎い。ここらへんはOpethの影響が多分に見受けられますが、Early CrossはOpethほどデスメタルに寄るわけでもなく、あくまでも指向するプログレッシブサウンドを演出するためにメタルの持つ叙情的な側面を顕著としているように思えます。女性ボーカルということもあって、頽廃性よりも叙情性・感傷性を意識するそれは、軽めのところでSilent Stream of Godless Elegy、ヘヴィさでいえばAva Inferi、Nox Aureaなどのバンド群に見受けられる空気感とも言えるでしょう。
基本的には陰鬱なゴシックサウンドですが、プログレッシブありフォーキッシュありと様々なジャンルを融合させたような質感も魅力的で、奏者のバックボーンが窺い知れます。全体として収まりもよく瀟洒な印象を受けますが、14分にも及ぶ6. The Pilgrimageや大団円に向かって静かに、そして激しくリフレインし収束していく7. The Fogなどの楽曲は挑戦的でありひとところに留まらないバンドの意欲性も感じることができます。
リスナーの感情に直接訴えかけるというよりもサウンドから想起し得る情景にリスナー自身が自発的に思いを馳せられるような、そんな想像に満ちた音世界が広がっています。聞く者によって表情を変えるそのサウンドはまさに"Landscape Rock"と呼んでも過言ではないほどに言い得て妙ですね。
日本のみならず世界フィールドでも稀有な音楽性なのでがんばっていってほしい。
このアルバム制作時から現在まで、ボーカルのNatasha嬢、ギター、ドラムとメンバーが交代していて入れ替わりが多いのが少し心配ですが、新ボーカリストも入って(これまた別嬪さん)ライブもたまにやっているようなのでまた地平を拓いてくれる新たな可能性を見せてもらいたいものです。まだライブを見られてないので早くその機会が訪れますよーに!
Cairn
公式HP
http://earlycrossband.com/
https://www.facebook.com/earlycrossband
bandcamp
http://earlycross.bandcamp.com/